相続登記について私たちが必要な知識や手続き、注意点
昨今のニュースで「相続登記の義務化がはじまる」という話をよく耳にします。登記とは不動産を購入した際に所有権の証明をする手続きとは理解していますが、相続とどのように関係あるのか。なぜ今になって義務化が叫ばれるようになったのかは不透明です。大切なのは、これから自分が相続を迎える時に、相続登記(および義務化)についてどのように動けばいいのかという点です。
相続登記とは?
相続登記とは、亡くなった方(被相続人)から不動産を相続した際に手続きする名義変更です。仮に土地や建物をAさん、Bさんの両名が「自分のものだ」と主張した際に、証明する術はありません。そこで国は、法務局に保管する登記簿で土地・建物の所有者を管理しています。言い換えれば、これまで登記を正確に申請していなければ、実際に自分の不動産だったとしても、第三者に対して所有権を主張できないということがいえます。
当然、国は相続税の課税において登記を参照にします。また相続人間でトラブルが発生した場合も登記はどうなっているのか、これまでどのような登記変更が行われてきたのかを参考にします。
一方でこれまで相続登記は義務化されていなかったため、実際の所有者変更の際に相続登記がされず、実務の場面で問題が頻出していました。そこで国は、相続登記の義務化に動き出しました。
相続登記されていない土地はどれくらいか
一般財団法人国土計画協会による調査結果によると、2017年時点の所有者不明土地は約410万ha(ヘクタール)、同資料によると2040年には約720万haに到達するといわれています。九州全土が約370万ha、北海道が約834万haなので、いかに所有者不明土地が広大かがわかります。
ただ今からすべての相続登記を遡及して、相続人すべてに対して連絡、合意を取るのは現実的に不可能です。国も相続の当事者も野放しにした結果、所有者不明土地が拡大しました。そこで今後の対策として国は、相続登記の義務化を開始します。詳しく見ていきましょう。
相続登記の義務化はいつからか
①相続登記は3年以内に
相続登記の義務化は2024年4月1日からです。不動産登記法改正法の施行を以って適用します。
2024年4月以降は、「相続の開始および所有権を取得したと知った日から3年以内」に相続登記をしなくてはなりません。なお、被相続人の不動産所有を知らなかった場合も考えられますが、その場合は上記の期間には含まれず、知った日から3年以内の計算がはじまります。
また複数の相続人が存在するケースもあります。その場合は最終的に全員が不動産の相続を知ることになる、遺産分割が完了した日から3年以内という定めがあります。
②相続登記の義務化には罰則もある
あまりこのような法律で罰則を定めることは多くないのですが、相続の義務化には罰則規定があります。
相続により取得した不動産を、正当な理由がないのに3年以内に登記しなかった場合、10万円以下の過料を求められる可能性があります。また、相続登記の義務化では同時に「住所変更登記の義務化」も実施されます。不動産の所有者に氏名・住所の変更がある場合も、2年以内に変更手続きを済ませておかないと、5万円以下の過料が請求される可能性があります。可能性がありますというのは、実際に罰則請求が実行されるのか、それとも法規制だけの話なのか、温度感がわからないという意味です。ただリスクを考えると、義務化のスケジュールに合わせて対応しておいた方が良いでしょう。
③相続登記の義務化は遡及して適用される
相続登記の義務化でもっとも大きな問題とされているのが、義務化は遡及適用されるという点です。つまり2024年4月以前に相続が行われた場合も、登記変更は義務化されます。期限は改正法の施行日から3年です。よって2024年7月の3カ月到来を前にして、相続登記をしていない土地は国からの注意喚起がなされるなど、大きな問題となるでしょう。そこで支援制度として、「相続人申告登記」制度が設けられます。
相続人申告登記制度とは?
現実的に、2024年にすべての登記をするのは困難です。登記に必要な書類が多い点、一般の方に不慣れな点など、二の足を踏む人も多いでしょう。そこで当局は改正法に合わせ、「相続人申告登記制度」が設けられます。
相続人申告登記制度とは、「所有権の登記名義人に相続が発生したこと」と「自身がその相続人であること」の申し出を行うと、登記官が登記簿に記載を行います。この作業により3カ月以内の登記義務を完了することのできる、いわば仮申告のようなものです。
(相続人申告登記制度のメリット)
①相続登記の義務を履行したとみなされる
②相続人が複数いても単独で登記の申請ができる
③何種類もの書類は必要なく、申請する相続人の戸籍謄本のみで手続きできる
なお専門的な話になりますが、相続人申告登記制度はあくまで不動産登記法の罰則に向けた救済策であり、第三者に対し登記の効力を示すことはできませんので注意しましょう。
相続登記をしないとどのようなデメリットがあるのか
相続登記がされていないと相続トラブルの温床になる
ここからは罰則如何からは離れ、相続登記をしない場合にどのようなリスクがあるか考えます。
相続登記がされないと、いずれ発生する次の相続登記時に円滑な登記ができず、野放しになります。その先に発生することは、権利関係の複雑化です。その土地は結局、いつまでは誰の土地で、いつから次世代の土地だったのか。時間が経過すると当時の相続人は亡くなっていたり、連絡先がわからなくなっていたりと、弊害がとても大きいものです。
なお、遺産分割協議が終了していて、「相続登記だけ」が完了していない場合は、当時の朱書類自体は有効です。再度遺産分割協議を行う必要はなく、相続登記を進めることができます。
相続登記がされていないと不動産が売却できない
相続登記が完了していない不動産は売却したり、担保にしてローンを組むことができません。売却を考えている場合は、必ず相続登記を完了するようにしましょう。
複数の相続人がおり、そのなかに借金を滞納している相続人がいた場合、その債務者が相続した持ち分を差し押さえることができます。一部が差押された不動産は売却をはじめとした様々な運用時にネックになることは間違いなく、ほかの相続人も著しい被害を被ります。
相続登記は早めに専門家への問い合わせを
相続登記の問題に関しては、これから相続登記を迎えるであろう人と、既に登記が円滑に進んでいない土地を所有している人やその家族で明らかに温度感が異なる問題です。共通していえることは、一刻も早く専門家に相談して、自分はどう動くことがベストなのか個別回答して貰い、可能な点に動きだすことです。本記事にて紹介した相続人申告登記制度を申請するだけでも、状況および罰則負担のリスクは著しく減少します。
そこで、本記事の掲載している実家相続相談サイトに相談しましょう。登記の専門家である司法書士や税理士が、登記単独だけではなく、周辺の相続リスクも踏まえてどう考えていくべきか、親身になってアドバイスします。2024年の相続登記は大きく周辺環境の変わる年です。可能ならば不動産登記法が施行される前に一度相談し、状況を分析したうえで備えることが理想です。相続リスクを軽減するためにも、まずは一歩踏み出して連絡してみましょう。