実家相続で兄弟姉妹しかいない場合の分割方法と想定されるトラブル
相続において兄弟姉妹しかおらず、相続財産に実家が含まれるケースはよくあります。特に相続財産が実家のみの場合、どのように分割すればよいかは難しい問題です。実家を売却して現金化できればいいですが、思い入れのある実家を手放すのに躊躇する方も多いでしょう。
そこでこの記事では、兄弟姉妹しかいない実家相続における分割方法と想定されるトラブルについて解説します。
兄弟姉妹が実家を相続する場合の選択肢
相続は資産家だけの問題ではありません。被相続人の子である兄弟姉妹が実家を相続するケースにはいくつかの選択肢があり、そのなかから自分や家族にふさわしい方法を選ぶことが大切です。ここでは、兄と妹の2人で実家を相続するケースでみていきましょう。
| <兄弟姉妹で実家を相続する場合の選択肢> ① どちらか、または両方が実家に住む ② 実家を売却する ③ 賃貸物件として活用する |
それぞれ、具体的に解説します。
①兄(妹)が実家に住む
兄か妹のどちらか、または両方が実家に住む選択肢があります。一般的に、親が高齢で亡くなれば、子も住宅を所有している可能性はあります。しかし、実家の住環境が好みだったり、賃貸住宅に住んでいたりする場合は、実家に住むという選択を検討するでしょう。特に思い出深い実家であれば、何とか維持したいという思いは強くなります。
現実的な選択肢としては、兄か妹のどちらかが住むことです。兄が実家に住む場合、実家の所有権をすべて兄とします。妹には、実家の価値分の相続財産を譲り渡すことで、平等性を確保します。この分割方法を換価分割といいます。
兄か妹のどちらかが住めれば、実家を売却する必要はなくなり、自宅とは別途かかる実家の管理費用で負担に感じることはありません。
②実家を売却する
兄と妹ともに、住宅を所有し、すでにほかの地域での生活が安定している家族は多いでしょう。特に実家から離れた地域に暮らしている場合、実家の管理は誰もできず、思い入れのある実家であったとしても、維持することは厳しい状況です。
実家を売却する決断は難しいかもしれません。この点は、管理できなかった場合の費用負担や遠方から管理する場合の費用・手間と比較して、よく検討することをおすすめします。実家を相続する人が悩む選択なので、相続に詳しい専門家に相談してみるのもひとつの方法です。
③兄(妹)が家主となり貸し出す
兄か妹のどちらか、または共同で家主となり、実家を貸し出します。一戸建てなら土地の広さと建物の傷み具合によっては、建て替えも検討します。マンションであればリフォームが必要となります。
賃貸物件にすれば諸費用はかかりますが、負担なく譲り受けた土地と建物から収益を得られる可能性があり、生活の金銭的な支えとなります。
一般的に管理会社に管理を委託するとはいえ、賃貸経営には知識と経験が必要です。賃貸物件を維持するための管理費用・光熱費だけでなく、将来的には大規模修繕を控えています。資金計画をしっかり立て、収益性を見込めるかどうかを確認しましょう。
相続における4つの分割方法

兄弟姉妹で実家に住んだり、売却したりする実家の活用方法を紹介しました。相続には、現物分割、換価分割、代償分割、共有分割とよばれる、4つの分割方法があります。それぞれの特徴を理解し、自分に合った分割方法を選ばなければなりません。
ここまで紹介した兄弟姉妹の選択肢を念頭に、各分割方法の特徴を具体的に解説します。
①現物分割

現物分割は、相続財産の種類ごとに分割する方法です。土地と建物を別々に分割したり、土地を分筆(分割)して、それぞれ単独名義にしたりすることもあります。相続人全員が納得できる分割であれば、手続きが簡単なため、スムーズに進められます。兄がどうしても実家を相続したいケースでは、次のような状況が考えられます。
なお、有利な状況とは、各状況下で現物分割を選んだ場合に、スムーズに相続が進むと予測されるものです。困難な状況で現物分割を選ぶとトラブルになりかねません。
実家以外の財産が実家よりも価値が低い場合、妹にとっては不公平な遺産分割となり、遺産分割協議が難航する可能性があります。実家に大きな価値を見出しているのであれば、妹に多めに分割するなどの対応が必要になるでしょう。
②換価分割

換価分割は、実家や有価証券などを売却して、現金として分割する方法です。兄や妹が相続してから売却するのではなく、分割するために売却します。換価分割するためには、相続が発生してから10ヶ月以内に実家を売却・現金化し、相続税の申告・納付をしなければなりません。
期限までに相続税の申告・納付ができなければ、延滞税が発生します。早く売却するために、売却価格を相場よりも下げなければならない可能性もあります。買い手が見つかりやすい地域ならいいですが、そうでなければ相続後に売却するなどの対応が必要です。
③代償分割

代償分割は、多くの相続財産を受け取る相続人が、均等な分割になるように、ほかの相続人に差額分を代償金として支払う方法です。たとえば、兄が5,000万円の実家を、妹は3,000万円の現金と有価証券を相続する場合、兄から妹に1,000万円の代償金を支払えば、公平になります。
代償分割は、分割する財産の価値に差があっても、代償金を支払えば不公平感なく分割できます。しかし、代償金の額によっては支払うことができず、代償分割を選べません。相続人にはある程度の財力が求められます。
このようなケースに備え、実家を相続する相続人を保険金受取人とする保険に加入し、納税資金や代償金の準備をする対策が必要になります。
④共有分割

共有分割は、相続財産を相続人で共有する方法です。実家の持分割合を、兄と妹とで50%ずつとし、相続人が共同で活用します。ほかの分割を選択するには条件が悪い場合、共有分割なら相続しやすくなります。
兄と妹とで50%ずつ相続したあと、兄が亡くなり、兄の子どもたちがさらに共有分割で相続することがあります。このような分割が何世代も続くと、権利関係が複雑になり、実家を自由に活用できなくなります。特に、相続人同士の交流が希薄であれば、のちのちトラブルになる可能性があります。
共有分割は、ほかの分割と比べると選びやすいかもしれませんが、将来的なトラブルを含んだ分割方法といえます。
想定されるトラブルと対処法
相続した実家を活用する際には、何らかのトラブルが想定されます。あらかじめわかっていれば、対応しやすくなります。特に共有分割で実家を活用する場合には注意が必要です。ここでは前述した選択肢ごとの想定されるトラブルを紹介します。
①「兄(妹)が実家に住む」場合のトラブル
共有分割で兄が実家を使用する場合、実家の使用料(賃料)を妹に支払い続けなければなりません。兄妹間とはいえ、支払いが滞れば、お互いの関係が悪化し、差し押さえなどのトラブルに発展する可能性があります。
実家を売却する場合でも、共有者全員の合意が必要で、将来さらに子や孫が相続で共有すれば、合意を得るのに時間がかかるだけでなく、合意を得られるかも不透明になります。
②「実家を売却する」場合のトラブル
遺言書で、兄に維持費用として多めに譲り渡す代わりに、実家の所有権を得たうえで、管理を任されることがあります。負担付の相続です。
相続時には、実家が手に入るため、費用負担については深く考えないかもしれません。しかし、実際に実家を管理すると、想像以上に費用が重く、売却を検討し始めるかもしれません。
妹からすれば、兄は十分に実家を管理せず、思い入れのある実家がなくなるため、納得できません。兄妹の関係は悪化し、さまざまなトラブルに発展する可能性があります。
③「兄(妹)が家主となり貸し出す」場合のトラブル
現物分割や代償分割、換価分割で単独名義の場合は、賃貸経営におけるトラブルは考えられますが、遺産分割でのトラブルは発生しにくくなります。
共有分割で兄または妹が賃貸経営をする場合、実家の使用料を支払う必要がでてきます。共同で経営する場合も、納得できる収益の分配方法を検討する必要があります。賃貸経営が上手くいかない場合もトラブルの原因になります。
まとめ
この記事では、兄弟姉妹しかいない実家相続における分割方法を中心に、想定されるトラブルについて具体的に解説しました。相続時は親が亡くなった直後ということもあり、多少の違和感があっても表面化しにくいものです。
将来的にも兄妹間でトラブルに発展させないためにも、兄妹でよく話し合って相続することが大切です。信頼できる、相続に強い税理士をお探しでしたら、実家相続を専門とする実家相続相続センターにご相談ください。